ことしもハナショウブの季節になりました。
萩市木間(こま)地区のハナショウブ園も
6月15日頃に見ごろを迎えそうです。
しかし、今年は思いがけない問題が起きています。
ここは、森川克己さんが退職記念にと
職場の仲間からハナショウブをもらったのをきっかけに、
休耕田を菖蒲園にしたものです。
茅葺の建物はほとんど一人で建てました。
森川さんの育てたハナショウブは、
花が大きくて見ごたえがあります。
私は、こんなに大きなハナショウブが咲き競うのを
他では見たことはありません。
私は、記者だった頃から毎年のように取材させていただき、
森川さんがこつこつと手作りで整備する姿やその思いなどを
KRYテレビの特集として放送させていただいてきました。
テレビを見た方々が遠方からも訪れるようになり、
近年では山里の菖蒲園としてすっかり有名になりました。
さらに今年は大河ドラマのロケ地(主人公の幼少期を描いた
第1話)にもなりました。
しかし、今シーズンは様子がこれまでとは異なっています。
花の数が少なく、ハナショウブの畝が
大きく崩れてしまったところもあります。
雑草だらけになっているところもあります。
花ひとつひとつの大きさは十分なものの、
全体的には違和感があります。
その原因はイノシシです。
園内に侵入し、荒らしてしまったそうです。
イノシシはミミズなどを食べようと、
鼻先で土を掘り起こします。
ハナショウブの根元あたりの土も広い範囲で
容赦なく掘り起こしました。
多くの人の心を癒してくれている菖蒲園は、
踏み荒れされ、掘り返されています。
愛情を込め、特別な思いでこつこつと作ってきた菖蒲園。
森川さんの落胆は、ことばで表現できないほどでしょう。
高齢のため体力的な限界もあり、
だんだんと手入れが行き届かなくなっていることに加え、
イノシシの被害・・・。
訪れてくれる人を真心でおもてなしするのを
生きがいとしてきた森川さんですが、
「これ以上続けていく気力を失ってしまいました」と話します。
県内の農林業の野生鳥獣被害の大きさについては、
ニュースで取り上げたことがありますが、
私はその現実のひとつをここで目の当たりにしました。
鳥獣被害の大きな問題は、そのときの被害だけでなく、
被害を受けた人のその後の働く意欲をも喪失させてしまう
ということです。作物を愛情を込めて育ててきた高齢者ほど、
その度合いは大きいでしょう。
この日にはまだ蕾も多かったハナショウブ。
困難に負けず、大輪の美しい花を咲かせて、
ご主人様をしっかりと励ましてほしいと思います。