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「なんべんも同じ事を…悔しい」水俣病被害者団体と大臣が懇談 公式確認から69年(熊本県)



5月1日、水俣病は公式確認から69年を迎えました。4月30日から環境大臣が訪れている水俣市から東島大記者がお伝えします。

【中継】
(東島大記者)
乙女塚という場所に来ています。ここでは患者団体主催の慰霊祭が毎年5月1日に開かれ、私はきょうこちらの式に出席しました。ただそこへ向かうにはこの道をのぼらないといけません。距離はありませんが、かなり険しく細い山道です。


年を取ってこの道を上れなくなったので、出席をあきらめたという人もいます。もちろん車いすではのぼれません。出席者が助け合って慰霊祭の会場へ向かいます。患者たちはこの道の整備を願っていて、行政に相談したこともありますが、私道・私有地だからという理由で今もご覧の通りです。

犠牲者を悼むための、ほんの100メートルもない道すら放置されている。これが現状です。浅尾環境大臣は2日間の日程で水俣市を訪れました。去年より時間をかけて水俣病の現状をみたいという大臣、そして69年目の水俣病慰霊式を取材しました。


【VTR】
被害者団体・水俣病患者連合の副会長を務めている松崎重光さん(83)。去年の大臣との懇談で「発言時間が3分を過ぎた」として、環境省の職員にマイクを切られました。苦しみながら亡くなった妻への思いを語っている最中でした。

あれから1年。松崎さんが参加する団体などとの懇談に浅尾大臣が出席しました。

■松崎重光さん
「3分間というのは私は短かったんじゃなかろうかと思っております。納得のいくまで話していただけますと幸いかなと思っております」

■浅尾慶一郎環境相
「不適切な運営がありましたことに対し、お詫びを申し上げます」


松崎さんは「自分で認定を求めない限り放置される今の認定制度はおかしいのではないか」と訴えました。このあと浅尾大臣は、水俣病センター相思社にある松崎さんの妻の位牌に手を合わせました。

午後から行われた水俣市主催の水俣病犠牲者慰霊式。亡くなった人を悼むプレートが慰霊碑に納められました。プレートには地元の中学や高校の生徒たちによるイラストなどが描かれています。患者・遺族を代表して、杉本実さんが祈りの言葉を述べました。杉本さんの祖父母と両親は認定患者です



■患者・遺族代表 杉本実さん
「家族が水俣病を発症してからのいじめ、差別、石を投げられたり、漁に使う網を切り破られたりは家族が語る話でしか聞いていません」

裁判で加害責任が確定している国と熊本県、そして、チッソの代表がことしも出席しました。

■浅尾慶一郎環境相
「持続可能で安心して暮らしていける社会の実現を目指して全力で取り組みを進めていくことを誓います」


■熊本県・木村敬知事
「県政の最重要課題である水俣病問題に対し、県庁一丸となって全力で取り組んでいく」


■チッソ・山田敬三社長
「患者の皆様が安心して暮らすことができる環境を維持し、地域社会の発展にも貢献していく」


一方、水俣病で亡くなった人たちの遺品が納められた水俣市の乙女塚では、患者団体「水俣病互助会」主催の慰霊祭が行われました。行政主催の慰霊式が始まる以前の1981年から続くもので、今回で45回目です。ことしは約60人の出席者が焼香し、水俣病の犠牲になったすべての命を悼みました。


■胎児性水俣病患者・坂本しのぶさん
「(大臣との懇談について)やっぱり大臣と話をしても同じだなと思いました。なんべんもなんべんも同じことを言わなければいけないのが悔しいです」


【中継】
坂本しのぶさんも出席した2日間の環境大臣との懇談では多くのことが話し合われました。認定基準の是非といった大きなテーマはもちろんですが、物価の高騰で今の手当てでは生活が苦しいですとか、離島に住んでいるので病院に行くのも大変とか、認定患者だけに限られている施設の利用をほかの被害者にも認めてもらえないでしょうかなど。

聞いていると、それくらいはすぐに何とかできるのではと思うことも数多くありました。大臣や国は「要望は聞きました」「これから検討したい」と繰り返すばかりで、1日も被害者団体からは「かみあわない」という嘆きの言葉が聞かれました。「患者や被害者に寄り添う」、「丁寧に話を聞きます」と口で言うのはたやすいことです。

毎年5月1日、この険しい山道をのぼるたびに政治や行政の冷たさを踏みしめているような、そんな気持ちになりま
す。

(05/01 18:59 熊本県民テレビ)

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