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100年続く老舗製造所の女性「しょうゆ ものしり博士」任命 食育として“香りや味”魅力の伝承《長崎》(長崎県)



日本の食文化に欠かせない 『しょうゆ』。

"受け継がれてきた味を大切にしたい"

老舗製造所で働く女性が、100年続く味を守り受け継ごうと奮闘しています。



◆白衣に身を包んで講義するのは…「しょうゆのコト」

林 温子さん 34歳。

バッグのなかには、小麦や、大豆が入った瓶。

そしてトレーも準備し、白衣に身を包んだ林さん。

そして、話し始めたのは…。

(林 温子さん)
「この1本にはどれだけの思いが詰まっているのかを、みなさんに教えられたらと思って」

しょうゆ作りへの思いです。

林 温子さんはその名も “しょうゆ もの知り博士” 。

食育として、しょうゆの作り方などを教えることでその魅力を伝えています。

(林 温子さん)
「おいしいものを食べるとき、人は笑顔になる。食育を通じて、いろんな人にその思いを伝えていけたらいい」



◆創業107年 老舗しょうゆ製造所の味を守る

島原市北門町にあるのが、今年、創業107年を迎えた老舗しょうゆ製造所『林醤油本店』です。

「濃口」「薄口」「刺身用」など、8種類のしょうゆを自社で製造し販売しています。

林さんは実家の店を継ぐため、10年前ほどから働いています。

(林 温子さん)
「刺身醤油(がおすすめ)。九州特有のトロっとした甘みのあるしょうゆで、その味はずっと受け継いでいる」

(島原市民)
「刺身醤油は甘みがあるから、こればっかり。しょうゆもずっとマルハヤシを使っている」

地元の人にも長年親しまれてきた「マルハヤシ」の味。


今では、接客や経理、営業など多くの仕事を任され、5代目の母・りえさんを支えています。

(林 温子さん)
「小さいころから手伝っていた。お店で買われる人の笑顔など、いろいろコミュニケーションをとって、すごく楽しい」



◆フタを開けたとき「香り」「味がおいしいもの」を

(林 温子さん)
「ここがうちの工場です」

大豆、小麦、食塩を主原料とする発酵調味料 “しょうゆ”。

蒸した大豆と、火入れし炒った小麦に麹菌を入れ、塩と地元の湧水で混ぜ「もろみ」が作られます。

気温、湿度などの環境や熟成期間によって、その店ならでは味に。

もろみを約半年かけて、発酵・熟成させます。

(林醤油本店 工場長 有田 博さん)
「(熟成することで)角がとれて塩辛さが、まろやかな感じになる。作るときに愛情を込めている」

「林醤油本店」では店舗のほか、地元のスーパーや、オンラインショップでも販売しています。

(林 温子さん)
「微生物が住んでいるので、それとと一番もに半年寝かせて、おいしいしょうゆができる。お客さまがフタを開けたときに香り、味がおいしいものを一番お届けできるのでは」



◆和食に不可欠「しょうゆ」…なのに全国の製造工場が減少

林さんは地元の高校を卒業後、大阪の調理師専門学校で調理師免許を取得。

愛知の懐石料理の店、大阪ではフレンチレストランで料理人として働きましたが、23歳の時に “転機” が訪れます。

(林 温子さん)
「祖父が病気をして…」

4代目として店を守ってきた祖父・茂樹さんが病に。

家業を継ぎたいと決心し、地元へ帰ってきました。

(林 温子さん)
「家系を継ぎたいというのはあった。(茂樹さんから)いろんな人の手がかかって “一つの商品” ができているので、自分1人で作っているのではないというのは、ずっと教えられた」

高齢化や後継者不足が深刻とされる、しょうゆ製造業界。

1955年には、全国に6000の製造工場がありましたが、食の多様化や職人の高齢化などで、今では6分の1の数に。

出荷量、消費量ともに、年々減り続けています。

(林 温子さん)
「なくなっていくのは、さみしい。お互いに切磋琢磨してやっていたので、文化はなくしてはいけない強い思いのほうが勝った」

"受け継がれてきた味を大切にしたい"



◆しょうゆ製造を守るため「官能検査員」資格取得

その思いで取得したのが、しょうゆの香りや味などの違いを正確に見分ける「官能検査員」の資格です。

(林 温子さん)
「作られている樽がどのくらい熟成があるのか、香りだけでも十分わかったりする。
薄口は炊き込みご飯や茶わん蒸し。濃口は魚を煮たり、肉じゃがに最適。(客にも)味見をしてもらって、安心して買ってもらうことをやっている」

全国のしょうゆメーカーが加盟する協会から “もの知り博士” に任命された林さん。

(林 温子さん)
「(しょうゆの香りの成分は)何種類あると思う?正解は300種類」

九州の女性で初めて、県内最年少の「もの知り博士」で、その知識をいかし、小中学校でしょうゆを通した食育に力を入れてきました。


この日は 地元の商工会議所の女性部のメンバー約30人を前に講義。

届けたいのは、"食べる楽しみ" です。

(林 温子さん)
「いつもの感覚で入れてしまうと、減塩じゃなくなる。しょうゆ専用のスプレーが売っている。スプレーでかけると、普段入れる量よりは少なくなる。そのひと手間を(考えてほしい)」

(参加者)
「しょうゆ一つにしても、これだけ力を入れているのに感激した」

(参加者)
「直接口にいれるものなので、勉強させてもらってよかった」


日本の食文化を支えてきた「しょうゆ」。

(林 温子さん)
「おいしさ、楽しさは絶対大事。しょうゆの文化は、日本古来からずっとあるものなので、これからの人たちも、もっとしょうゆに興味を持ってもらいたい」

親しまれてきた味を継承し、食卓に笑顔を届けます。

林さんは今後、店で販売しているしょうゆを使った「料理教室」の開催を予定していて『林?油本店』のインスタグラムで発信するということです。


【NIB news every. 2025年3月14日放送より】

(04/27 07:00 長崎国際テレビ)

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