■【特集】イカ王子はあきらめない「失敗からの復活」期待する人々の思い(岩手県)
特集は、水産加工会社の経営に行き詰まり、ことし再出発した宮古市のイカ王子です。地元の印刷会社などが、再出発を後押ししていますが、大きな失敗をしたイカ王子をなぜ周りが期待するのでしょうか?
■イカ王子を後押しする人たち
花坂さん「『見つけた、いた』と思って」
奥山さん「(目指すは)本当にメイクドリーム」
けんぼの店主「思いが共有できているので」
■2017年東京
「三陸王国イカ王子と申します」
震災後、イカ王子を名乗るようになった宮古市の鈴木良太さん。三陸の海の幸を全国にPRしてきましたが・・・
■2024年債権者説明会
「皆さんに多大なるご迷惑をおかけし、まことに申し訳ございませんでした」
記録的な不漁が原因で、経営する水産加工会社がおととし民事再生法の適用を申請。イカ王子の活動は停止しました。
■2025年春宮古
しかし、ことし春、批判の声があることは承知の上で、再出発を決意。応援してくれる仲間とともに、チームイカ王子を結成して復活を宣言しました。
イカ王子鈴木良太さん(43)
「うちらの海、大丈夫だよって、沿岸の皆さんに言いたい。いますごく本当にどこも大変で」
地域や産業が抱える課題。それが、失敗したイカ王子になお期待する人たちの背景があります。
宮古市の老舗印刷会社。
花坂印刷工業 花坂雄大社長(42)
「昭和8年(1933年)にうちの会社で作った宮古の案内です。開いていくと…水産の紹介をしている。宮古の生業として変わってないと思う」
宮古の人口の3分の1は何らかの形で水産に関わっていると語るのは、5代目の社長・花坂雄大さん。人口減少が進む地域が生き残っていくには、まず水産を盛り上げなければと、イカ王子の活動を以前から手伝ってきました。
震災後、初めてイカ王子に会った時のことは鮮明に覚えています。
花坂社長
「(初めて会った時)わー、この人だなと思って、見つけた、いたと思って、水産を変えうる人材がいた!そもそも変えようと思っている人がいたという感じ」
■2025年6月宮古
ことし、自分の印刷会社のクリエイティブ部門の仕事として、正式にチームイカ王子をつくることを決めました。スタッフにも強い危機意識があります。
花坂印刷工業 奥山淳志 社外ディレクター
「印刷業自体が『斜陽』と呼ばれて久しいわけだし、普通にやっていれば難しい状況をずっと感じてきて、でもこうやって(会社に)若い人が来ていて、挑戦のしがいはあると思う」
うまくいく保証はありませんが、若者は・・・
花坂印刷工業 デザイナー八重樫瞳子さん(24)
「おもしろい。どんどん王子のブランドができていくように、デザイナーとして過ごせているのはすごく楽しいなと思う」
地域の活性化を願っているのは印刷会社だけではありません。復活を宣言した直後のことし7月、イカ王子は、山田町のホームセンターから依頼を受け、店先で自慢のタラフライを販売していました。
ホームワンサトー 佐藤正基 専務
「宮古の名を全国に轟かせるというか響かせるというか、そういったところで王子はすごく貢献していて、我々もそういったパワーをもらいたいというと、一緒にやっている」
こちらの居酒屋は、イカ王子のタラフライが看板メニューの一つ。大量消費ではなく、産地のこだわりが大切だと店主は考えています。
居酒屋けんぼ 新田健一 代表(49)
「圧倒的な鮮度感。魚を扱ってきた私なので分かるが、新鮮なうちに急速冷凍し、商品になっているので、鮮度が抜群。お客さんびっくりする。地元の人でさえそう言う。宮古の魚を皆さんに食べてもらいたいという思いが共有できているので」
■ことし8月秋田
伝統を守りながら何かを変えたいと考える人は、県外にもいます。この日、イカ王子が訪れたのは、秋田市の水産加工会社です。実は1か月のうち1週間、この会社の社員として働き、新商品の開発などを手がけることになりました。
魚を宅配する会社ですが、ネット通販などが普及する中、方針転換が不可欠で、イカ王子が会社経営に失敗したことはむしろプラスに考えているといいます。
東冷フーズ 姉崎一輝 社長(40)
「何を売っていくか、結構難しくなっている。(失敗したイカ王子に不安は?)挑戦あってこその失敗だと思うので、いろいろあがいての結果だと思うので、それは悪いこととは思っていないし、(失敗の)経験を他の人に生かせるように話してくれようとしているので、本当に尊敬できる」
ハタハタの記録的な不漁が続く秋田県。窮地に陥ってもあきらめずに光を探し、活性化につなげなければならないと、イカ王子はいいます。
イカ王子
「秋田でも去年かな、ハタハタの寿司をやっていたメーカーが倒産したというニュースも見たりしていて。ずっと生業にしてきたものが急に獲れなくなって、僕たち(宮古)のサンマのようになっちゃって。今あるもので、もっとやっていきたい」
債権者に迷惑をかけたことを肝に銘じながら、このままでは終われないと復活を宣言したイカ王子。後押しする人たちもまた、先細りする危機感と向き合い、現状を変えて未来につなげたいと必死の思いで動いています。
(10/17 18:36 テレビ岩手)
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