■【特集】デフリンピック目指すスプリンター 夢に向かって走り続ける(岩手県)
聴覚に障がいがある人たちのスポーツの祭典「デフリンピック」がことし11月、東京で開かれます。陸上競技で、この4年に一度の大舞台「デフリンピック」を目指すスプリンターがいます。奥州市の今野桃果さん18歳です。夢を追いかける姿を取材しました。
休日の競技場で練習に励んでいるのは、今野桃果さん18歳。聴覚に障がいがあります。
今野さん
「(100メートルで)13秒を切るように頑張りたい。目標はもちろん、デフリンピックを目指したいと思っています」
短距離の分野で世界を目指しています。今野さんは3月まで、盛岡聴覚支援学校・高等部に通っていました。補聴器を外すと、音があることは分かりますが、内容は分かりません。手話や、相手の口の動きを読み取る「口話」で周囲とコミュニケーションを取ります。
「健常者と話をする時に、手話じゃなくて、口が話すの早いし。口話だから、それが困っています」
奥州市出身の今野さんは、3人姉妹の末っ子。3歳の頃、難聴とわかりました。
本格的に陸上を始めたのは小学校6年生の時。そのキッカケとなり、ずっと競い合ってきた人がいます。今野さんの双子の姉、春果さんです。
春香さん「(桃果さんは)負けず嫌いなところがあります」
「うちに勝ちたい?」「はい」
「タイム勝ちたい?」「はい」
「負けて悔しい感じがします」
タイムはいつも春果さんの方が上。姉はいつも一歩先行く存在でした。
今野さんは身近なライバルと遠くの目標を見つめ、練習に励み、年々自己ベストを更新しました。
顧問
「後半が強い選手だと思っていました。まだまだ伸びしろはあると思います」
(行け行け行け!)
全国ろう学校陸上競技大会では、100メートルと200メートルで連覇を達成。
18歳以下の強化指定選手となり、陸上の世界デフユース大会にも出場しました。
陸上のほかにも頑張ってきたことがあります。就職に役立てるための技術の取得です。とりわけ大好きな洋裁の授業には熱心に取り組みました。親元を離れ、寄宿舎で生活しながらの学校生活。友人が心の支えでした。
今野さん「(よくする話は)アイドルとか。恋話とか。ははははは」
充実した時間を過ごした今野さんは、ことし3月、支援学校を卒業しました。
よき仲間たちに恵まれた学校生活でした。
今野さん「盛聴には中学校から6年間、学校で過ごしました。その後、高等部で過ごして。周りの生徒たちと一緒に楽しく過ごしたり。先生方は、お世話になってうれしかったです。陸上も集中して、陸上の世界大会の時に、みんな応援してくれて、本当にうれしくて。ありがとうございました」
「フレフレ3年生、フレフレ3年生、オー!」
4月、今野さんはふるさと奥州市の会社に就職しました。
「(仕立てているのは)水沢ダウンのこの部分になります」
「水沢ダウン」と呼ばれるダウンジャケットで有名な大手アパレルの水沢工場です。
Q(慣れましたか?)「はい、ちょっとはい」
周囲の人たちも、今野さんのこれからに期待を寄せています。
工場の上司
「すごく素直で笑顔が素敵な女性ですね。(陸上は)社員全員で応援してますので頑張ってほしいと思っています」
4月20日、自宅から近い競技場に、今野さんの姿がありました。学生時代の恩師が練習をサポートします。長年ライバルだった姉や、切磋琢磨した学校の仲間たちはいません。
自分の記録。結果を残すことがライバル。デフリンピックにつながる大会はもうすぐ。焦りと不安を打ち消すように汗を流します。
ライバルは自分自身。今野さんは変わらぬ夢に向かって走り続けます。
5月5日、6日に埼玉県で選手選考競技会が開催され、今野さんは、100メートル、200メートルに出場予定です。ここで、1位となれば代表が内定。2位以下は、実績やベストタイムを考慮しての選考となります。岩手から声援を送りたいですね。
(05/02 18:50 テレビ岩手)
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