■【特集】「障がい」と「仕事」ともに働く場をみつめて (岩手県)
障がいがある大人の自立を促す施設が、滝沢市にあります。この施設を利用する人たちは、「障がい」の考え方を変えようと活動する企業のカフェで働いています。社会で活躍するとは、そして、「働く」とはどういうことなのか。彼らのひたむきな仕事ぶりから考えます。
村上敬祐さん「では、ごゆっくりどぞ!」
高橋結香さん Q仕事楽しい?「はいっ」
利用客「いい意味で、普通…ですね」
障がいのある人とない人が別々に仕事をしていることが多いこの社会で、その境界を失くそうとしている職場です。
ある日の朝9時30分。滝沢市にある自立訓練施設です。村上敬祐さん、33才です。
「よろしくおねがいします!」
ポケットに手を入れた姿がトレードマークです。
村上さん「おはようございます!」
高橋さん「おはようございます」
そしてもう一人、高橋結香さん35才です。
高橋結香さん「よろしくおねがいします」
Qいい調子?「はい」「ちいかわです」
施設は30人ほどの大人が利用しています。ここで農業や工芸品を作るなどして工賃を稼ぎ、自立した生活ができるよう訓練しています。
この時期日課のコメの検品を済ませた後、次の職場に行きます。
「緊張は最初はしたんですけど、いまは楽しいです」
Q仕事、楽しい?「はい!」
村上さん、挨拶と受け答えが端的で、硬派な印象です。
Qイサイパークの仕事は楽しいですか
「楽しいです!」「白湯を配るのが、楽しいです!」
やってきたのは盛岡市の百貨店・カワトクです。
仕事のスイッチが入りました。
挨拶「おはようございます!きょうもよろしくお願いします!」
ほかのスタッフ「名札取ってもらえます?」
2人は1階のカフェ「ISAIPARK」でホールを任されています。
「おはようございます!こちらでごゆっくりどうぞ!」
席を立ったお客さんをしっかり見送って…さっと食器を下げます。
カウンターで
「あ。片付けお願いします」「ありがとうございます」
村上さんは、目配りが利きます。何かに気が付きました。出勤前に話していたのはこのことでした。熱い鉄瓶から「白湯」を汲んでいます。寒くなったので、お客さんに水ではなく白湯を提供しています。
横のグラスもちらっと確認して、再び店頭へ。身のこなしが颯爽としています。
ぐっと手を組んで、客の前ではポケットに手を入れる癖を我慢しています。
高橋さん「これはどこですか?」
高橋さんも張り切ってお膳を運びます。所作がいつもおっとりしていて、丁寧です。接客することは好きなのだそうです。
いわゆる「障がい者」として生きてきた2人。
高橋さんは、統合失調症で、度々幻を見聞きすることがあるそうですが、今は薬で症状を抑えながら仕事ができています。
村上さんは、知的な障がいのため話すことが苦手でした。しかし、初めて春から施設の外で働いて、積極的な挨拶や会話が、少しづつ、身についています。
利用客「こういった人たちが普通に働ける環境があっていいと思う」
利用客「いい意味で何とも思わない。普通のこと。」
ISAIPARKは、障がいに対する考え方を変えようと事業を展開するヘラルボニーが営業している、服飾雑貨とカフェを併設した店です。メニューの一つのカレーに村上さんたちの施設で作ったコメを使っていて、店から「施設の人と一緒に働きたい」と呼びかけました。
オープン当日の大混雑をみんなで切り抜け、村上さんたちの大きな自信になったそうです。
ヘラルボニー 人事担当 山本しずくさん
「これまで障がい=できない、それが欠落と思われていて、それって別にいわゆる健常って言われる人たちの物差しで測って勝手にできないって決めつけてる」「お皿を返す場所を視覚化したりて障がいのあるなしに関わらずみんなが働きやすい場所になっているしここで敬祐さんや結香さんが一緒に働いてくださることで、色々な方が来ていいんだ、こういう光景を町なかに当たり前にあるような場所にしたい」
滝沢の施設です。外での仕事を終えて帰ってきた村上さんは、そのままソファに沈み込みました。何時間も人前に立って、気が張りつめていたんですね。
いわてひだまり農園 鈴木学代表理事
「どんどん自分からスキルアップしたいっていう意欲をもって取り組んだのが良かったなと思う。そこがお仕事であったり趣味であったり、色々な生きていく上で楽しいものを見つける所は時間をかけなければならない」
いわてひだまり農園 鈴木学代表理事
「ああいう姿見ると、やっぱりすごくいい世界だなと思って僕らもすごくなごみますし、一日の終わりはああならないといけないなと思って、力尽きるまで遊んで働いて一日終了って、すごく素直に見せていただけるので勉強になります」
高橋さんは、自分のやれる仕事の向こうに、充実感と夢を抱いていました。
高橋さん
「大変でした。でも楽しかったです。ISAIPARKに食べに来てくれている方々とか、おいしいって言ってくれるのがうれしいです。忙しいけど楽しいです。やっててよかったって思っています。私も統合失調症なので、そういう場をいただけるのは感謝しかないです。ここに来る前は病院に入院していたので、その時期が一番つらかったです」
Qもし新たに始めるとしたらどんな仕事?
「ラーメン屋…ふふふ」
Qラーメン!?
「はい。ふふふふふ」
高橋さんや村上さんなど「いわてひだまり農園」で働く人は、12月下旬までISAIPARKで働き、来年から別の仕事にチャレンジします。
(12/02 18:54 テレビ岩手)
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