■【特集】担い手不足と高齢化が進むコメの生産現場 地域の期待も背負って…田んぼを守り続ける農家の思い(秋田県)
参議院選挙の特集、価格高騰が続くコメについてです。
全国3番目の作付面積を誇る秋田ですが、農家の高齢化が進み、特に山あいの農地では担い手不足が深刻となっています。
コメ作りの現状を取材しました。
■品薄と高値が続くコメ フードバンクの活動に与える影響
生活に困っている人たちに食料品を支援している、フードバンクあきた。
県民から寄せられた善意をもとに活動を始めて今年で11年目。
今、大きな壁に突き当たっています。
物価高の影響で食料品全般、特にコメが集まらなくなっているのです。
支援する量を、減らさざるを得ない状況に。
フードバンクあきた 林多実さん
「箱を開けた時に喜んでもらう、その顔をイメージして詰めているのですが、『こんなものしかもらえないの?』というふうなものしか提供できなくなってしまうと、やはり、それでフードバンク活動を続けていくというのは難しいのかなっていうふうに思います」
■地域の期待を背負って…50年以上コメ作りを続ける男性の思い
様々な分野に影響を及ぼしている、コメ不足。
コメづくりの現場で、今何が起きているのか。
山あいに田んぼが広がる、秋田市雄和神ケ村地区です。
斉藤渉さんは、この地域で50年以上、コメをつくり続けています。
ほとんどの作業を1人でこなしています。
品薄と高値が続くコメ。
斉藤さんは、複雑な気持ちで春を迎えていました。
コメ農家 斉藤渉さん
「結構コメ離れが、あまり高いと進むので、ほどほどのところで。私らはどこがいいのか、でも農機具代、資材関係、肥料、こういうビニールとかも、今までと違ってだいぶ高いです」
斉藤さんが、今年、コメをつくる田んぼのほとんどは、地域の人たちから管理をお願いされた農地です。
年をとって作業ができなくなった農家の田んぼに、機械ごと出向いて、代わりに作業をしています。
斉藤さんが、頼まれてコメづくりをする田んぼは、年々増えています。
コメ農家の菅野敬一さんは、体調を崩してから、自分の田んぼのコメづくりを斉藤さんに託してきました。
斉藤渉さん
「今年の報告。コメが順調にとれたから。後日小作米を持ってきますので」
コメ農家 菅野敬一さん
「やはりこの田んぼから離れたくない、そんな感じはいつもしています。自分が作業を直接やれなくても、やっぱり誰かに頼んでも、先祖伝来の田んぼは大切にして、次の世代に受け継いでもらいたい」
自分の田んぼへの思いを胸に、菅野さんはこの翌年、息を引き取りました。
地域の仲間の期待も背負って続けてきた、コメづくり。
1人で作業をするには、限界があります。
この10年だけで、地域の田んぼは大きく姿を変えました。
斉藤渉さん
「8年前まで作っていた。こうなるんだよな」
コメを作るために斜面を登ったり降りたりと、作業が大変な山あいの田んぼ。
斉藤渉さん
「体に結構無理が来るんですよね。今も来てますけど。体を壊せばみんなに迷惑をかけるので。条件が悪いところは今は仕方なく」
■担い手不足と高齢化が進む生産現場 日本の農業政策はどこへ?
価格を安定させるためとして、国が長年進めてきたコメの生産調整。
意欲を削がれ、田んぼから離れる農家も後を絶ちません。
県内でも先月、随意契約で放出された備蓄米の販売が始まりました。
コメ市場は今、大きく動き始めています。
山あいの田んぼに、今年も変わらず、イネが植えられました。
コメの価格が高騰する中、国はこれまでの政策を180度転換し、コメの増産を検討しています。
担い手不足と高齢化が進む生産現場をどう守るのか。
肝心な問題は置き去りのまま。
斉藤さんも会社員の3人の息子に、コメづくりを継いでくれとは言えずにいます。
斉藤渉さん
「農家って難儀な割には賃金安いんだよな、実際。やはりご先祖様方が難儀してつくってきた田んぼを守っていくのも俺の使命なのかなというふうな認識はしてますけどね」
日本の農業政策は今、どこに向かおうとしているのか。
斉藤さんは不安を抱えながらも、地道に、地域の田んぼを守り続けるつもりです。
(07/16 18:15 秋田放送)
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