■阿波の名工「人形師・福井武さん」 60歳でゼロからスタート【徳島】(徳島県)
今回「阿波の名工」に選ばれた一人、鳴門市の福井武さんを紹介します。
人形浄瑠璃に欠かせない、阿波木偶作りの人形師としての技と人形作りへの思いを取材しました。
(記者)
「今回『阿波の名工』受賞おめでとうございます」
(人形師・福井武さん(76))
「ありがとうございます」
(記者)
「今の気持ちは?」
(人形師・福井武さん(76))
「びっくりしたのとともに、もらえるとなると嬉しいというか、励みにして頑張らないといけないという気持ち」
福井武さん76歳。
徳島の伝統芸能人形浄瑠璃に使われる、阿波木偶を作る人形師です。
阿波市出身の福井さんは大学卒業後、大阪、東京で働き、退職と同時に再び徳島へ。
そこで、木偶作り教室の受講者を募るパンフレットを見て、60歳で人形づくりの世界へ足を踏み入れました。
(人形師・福井武さん(76))
「人形浄瑠璃も知らない、人形彫りも知らない、何も知らない」
「だから木偶人形を作るためには、その世界のことを人から聞いたんではなかなか教えてくれない。それで自分でやろうと」
そして始めたのが「人形遣い」。
完全なゼロからのスタートだった福井さんは、木偶作りのため、人形の遣い手としても阿波木偶に関わり始めました。
人形遣いとしての経験を活かし、教室を卒業後も人形作りを続けること16年。
人形浄瑠璃の世界にはまり、10年ほど前には自宅に作業小屋をつくるなど、日々、真剣に阿波木偶と向き合い、技を磨き上げてきました。
(人形師・福井武さん(76))
「人間は左右対称じゃないというが、人形は左右対称に作る」
「一番大事なのは、中心線があって左右同じところに同じような形のものをつくっていく」
「鼻も中心線から見て同じようなものをつくる」
「彫るだけでやっぱり3か月くらいかかる。塗って髪を付けるとか冠をつけるとか、仕上げて行くのに一体に半年かかる」
徳島の伝統芸能を伝えようと、後継者の育成にも力を入れています。
週に1回開かれる「阿州でこじゅく」では、師範として人形作りを教えています。
(人形師・福井武さん(76))
「上は細いから下やな、これは、ここから細くせないかん、下を削ってもらおうか」
この「阿州でこじゅく」の代表が、人形作り45年の吉田尚行さん76歳です。
2024年、国が卓越した技能者に贈る「現代の名工」に選ばれた、福井さんの師匠です。
(福井さんの師匠・吉田尚行さん(76))
「人形遣いの経験がある方が人形製作を始められて、私たちの視点からでない違う視点から人形を作る、そのような人は徳島の伝統の中で非常にユニークな人」
「素晴らしい人形師が、阿波の名工になられて喜んでいる」
(記者)
「今後の目標は」
(人形師・福井武さん(76))
「阿波の名工をもらったということは、私の後輩たちも、もらうチャンスがあると」
「その人たちに頑張ってもらうように、指導していかなくてはならない。伝えていくのが一番」
60歳でゼロから始め、16年間の研鑽の末「阿波の名工」に選ばれた福井さん。
脈々と続いてきた阿波の伝統の系譜を、未来へとつないでいきます。
(12/12 18:27 四国放送)
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