■徳島で進化する「金継ぎ」 器のかけらを繋ぎ修繕する伝統技法【徳島】(徳島県)
割れた器を漆で繋ぎあわせて修繕する日本の伝統技法、金継ぎ。
この金継ぎを独学で習得し、徳島ならではの手法を編み出した男性を取材しました。
(金継ぎ師・石井道彦さん)
「お子さんが陶芸体験で作ったやつを、父の日・母の日にプレゼントされたものとか、大切な器が多いですね」
「割れてしまっても、捨てられなくて、ずっと持っていたと」
割れたり欠けたりしてしまった器を、漆で継ぎ合わせて修復する金継ぎ。
継ぎ目を金で装飾し、もう一度、命を吹き込む日本の伝統技法です。
不完全なものに美を生み出す「わびさびの精神」が今、世界の人々を魅了しています。
石井道彦さん。
金継ぎについて書かれたあらゆる本を読みつくし、独学で金継ぎの技法を習得しました。
今では、鳴門市にある自宅で金継ぎ教室を開いています。
その名も、金継ぎジョニー。
最初にとりだしたのは、小麦粉。
小麦粉に含まれるグルテンの粘着力が、漆の接着力を強化します。
石井さんが京都で特注した漆をチューブから出して混ぜ合わせると、「麦漆」という接着剤になります。
この「粘りけ」が出たら完成です。
竹べらを使って、割れた茶碗の断面に麦漆を塗り重ねていきます。
断面は凸凹があり、均一に塗るのは意外と難しい。
もう片方の破片にも麦漆を付けて、いよいよ貼り合わせていきます。
見事に引っ付きました。
(金継ぎ師・石井道彦さん)
「今は小麦粉を使うのが一般的ですけれど、昔の方は小麦粉がない時代は、炊き立てのご飯をすりつぶしたものに、漆を加えて接着していたといわれています」
「これ一週間もするとバリバリに乾いて、(器を)置いたときに接着面が割れずに、ほかのところが割れるぐらい、きれいに引っ付きます」
「単なる修繕品である器を、漆を塗り重ねていくことによって、ひとつの作品アートに変えていく加飾の作業です」
第2の工程は、砥の粉と呼ばれる石を粉状にしたものを漆に混ぜて、欠けた部分に埋め込みます。
1週間乾かしたら第3工程、麦漆で張り付けたつなぎ目を黒い漆で塗って、再び1週間乾かします。
最後の第4工程で繋ぎ目に塗るのは、赤い・弁柄色の漆。
金継ぎ用の長い筆先をしならせて、色を重ねます。
(金継ぎ師・石井道彦さん)
「接着してから漆を3回・4回塗り重ねて最後に金をまく。これが本金継ぎ・本格金継ぎと言われるものです」
梅の茶碗に金継ぎで、新しい枝が生まれた。
穴の開いたとっくりを、別の器の破片で金継ぎ。
(金継ぎ師・石井道彦さん)
「割れたり欠けたりして、本来なら価値がなくなった捨てられるものを、傷跡を隠してしまうのではなくて」
「装飾に変えて、わざと見せる美に変えていくっていうのは、日本人独特の感覚じゃないかなあと思いますね」
白い磁器に藍が載ったら、綺麗なんじゃないか。
金継ぎのきらびやかな線は見る人を魅了しますが、徳島には藍染がある。
石井さんは徳島らしい作品を作ろうと、藍継ぎという技法を編み出しました。
徳島で栽培した藍の葉を発酵させて作った染料・沈殿藍を樹脂に混ぜて、器のつなぎ目に塗っていきます。
(金継ぎ師・石井道彦さん)
「藍を混ぜすぎると固まるのが遅くなるので、藍を混ぜる量が大事です」
”11月は金継ぎ教室に、アメリカ・イギリス・フランス・スイスから受講者が訪れた”
一日で完成する手軽なモダン金継ぎを、記者も体験させてもらいました。
(金継ぎ師・石井道彦さん)
「1ミリに1秒かけるぐらい、ゆっくり金のラインを引いてください。」
(記者)
「すごく集中力がいる作業だなと思いました。息止まってます」
「私がモダン金継ぎで修繕した小皿が出来上がりました。割れたお皿を繋げると別の魅力が出てきます」
「金継ぎは新しい美を生み出す作業なんだと思いました」
(金継ぎ師・石井道彦さん)
「ニュースで聞いた話では、国連の事務総長が最近の世界情勢に合わせたスピーチの中で」
「壊れかけた世界の紛争が多い情勢も、日本の金継ぎのように絶対に修繕できるんじゃないかとスピーチしたというのもありますので」
「海外に行って金継ぎの講座とか、ワークショップとかできるようになれば、とても素晴らしいことだなと思います」
記念すべき日に贈ったり、もらったりする大切な器。
そのかけらとかけらを繋ぎ合わせることは、器にこもった人の思いも繋ぐということ。
石井さんはこれからも、新しい手法に挑戦しながら器を修繕していきます。
金継ぎジョニーの金継ぎ教室、モダン金継ぎは3000円で受講可能で、本金継ぎなども体験できます。
予約は電話とインスタグラムでも受け付けています。
(12/05 18:36 四国放送)
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