『二つの小箱』
この詩でみすゞさんは南京玉が大好きな気持ちを表現していますが、実は金子みすゞさんの愛娘・上村ふさえさんが3歳の頃、みすゞさんはふさえさんの何気ないおしゃべりを、手帳に書き記していましたが、その手帳のタイトルを「南京玉」と名付けていました。どれだけ一人娘が愛おしかったかが、この詩からもよくわかります。512編のみすゞさんの童謡と共に、その「南京玉」もぜひ手に取っていただけたら嬉しいです。
『誰がほんとを』
私が曲を付けている詩のひとつ。
以前、あるきっかけでこの詩と私の歌を知った方が、「会社で嫌な思いをしているけれど、この詩でとても勇気がわいた」とメッセージをいただいたことがあります。みすゞさんも(自分に本当のことを言ってくれているのだろうか・・・)と不安や寂しさが心を覆うことがあったのかもしれません。自分の悲しみと同じ感情を抱いた存在は、時としてそれが勇気に繋がる、自分ひとりじゃない、頑張ろうという気持ちに繋がることもあります。金子みすゞさんの詩の心は、本当にいろんな思いを救ってくれる、大きな存在です。
『硝子のなか』
雪の降る日は暖かいお家の中で過ごしたいもの。炬燵に入って明かり障子の絵硝子をぼーっと見つめていたら、家のお仕事のために行き来するおばあさまの姿が見えました。お休みの日の、炬燵に入っている、何気ない時間にも、家事を淡々とこなすおばあさまの姿。そこにいろんな感情が滲みでてきます。
日常の何気ない光景も、金子みすゞさんのペンにかかると、こんなに素敵な一つの作品になるんですね。
『早春』
お正月がきた喜びが、綺麗に景色に溶けて、広がっていく素敵な詩です。最初は目の前の毬で遊ぶ子どもに視線があり、それが空に浮かぶ凧へと移り、空の青さに心惹かれ、そして遠い昼の白いお月さまへと移ります。
はっきりとした言葉はなく、情景描写が短い言葉で綴られている中に、しっかりと思いが伝わる。みすゞさんの素晴らしいセンスで、シンプルに少ない言葉ながら思いを深く伝えてきます。これは詩や短歌、俳句などを楽しまれる方々にとって、教材としても素晴らしい作品だと思います。
『郵便局の椿』
仙崎郵便局を詠った詩。
金子みすゞさんのご実家・現在の金子みすゞ記念館の斜め向かいにある、仙崎郵便局。この詩は、みすゞさんが暮らしていた頃の2代目の局舎を詠ったもので、現在建っているのは3代目。今、郵便局の敷地内には、かわいい椿の木もあって、掲示板にはこの詩が掲げられています。ノスタルジックな詩に、みすゞさんが想う故郷の郵便局が、温かく切なく光ります。
『紙の星』
クリスマスの時期に入院をしていた子どもがいたんだな、と、病室に残るクリスマスの紙飾りの跡から想う、切ないクリスマスの残像の詩。リスナーさんから、自分が子どもの頃に入院をしていた時期の切ない思いを思い出すとメッセージをいただきました。実は私もちょうど小学5年生の12月に1ヵ月入院をしていたので、この詩は私も当時を思い出す詩です。いつも、見えないところで、知らないところで、華やかな光あふれる世界の影に、いろんな切ない場面もあることを、私たちは忘れないで、心を寄せられる人でありたいですね。光と影を両方を見つめられる心こそ、本当の温かい心の灯だと思います。
『白い帽子』
寒い季節になると思い出す、大好きな詩のひとつです。お気に入りの帽子を失くしてしまいますが、潔くあきらめるその心には、その帽子がせっかくだから、どこかの何かの役に立つ帽子であってほしいという願いがあります。自分の元を離れても、その物の幸せを、それを手にした人の幸せを願う愛情。この心根がとても素敵なのです。
『空いろの花』
今週は歌のリクエストをいただいた詩を朗読でもご紹介しました。この詩は私が初めて金子みすゞさんの詩に出会った年、最初の8編に曲をつけた中の1編です。ずっと空を見続けている女の子はいつしか空いろの花になったお話。その花にみすゞさんが話しかけます。あなたはどんなに偉い博士よりも本当の空を知っていると。有名ではなくても、本当の空を見つめている存在をちゃんと見つめて、認めてくれているみすゞさん。私はその眼差しに心を救われました。自分の音楽への思いを信じて貫いて頑張っていこうと決心することが出来ました。この詩は、自己肯定感を高めてくれる、救いの詩です。
『こだまでしょうか』
14年前の東日本大震災の直後、企業CMが自粛された時期に、一日に何度も流れたACジャパンのCM。偶然にもその時のCMが、金子みすゞさんの詩「こだまでしょうか」を朗読している作品でした。
それがきっかけでみすゞさんの詩を初めて知った、という方も少なくありませんが、あの頃特に、被災地の方々に心を寄せる全国の心の動きに、ぴったり寄り添ったのがこの詩でした。
こだまのように響き合う私たちの心と心。思いやり、優しさ、温もり、それを自分から差し出すことで、相手にも伝わり、そして相手から自分にもその眼差しが返ってくる。その人と人の心の繋がりの原点を伝えてくれる詩です。
今世界16ヶ国語に広がるみすゞさんの詩。これからも、世界中の人たちとこだまし合ってゆくことでしょう。
『お祖母様と浄瑠璃』
金子みすゞさんの実家では、子守歌がわりに浄瑠璃を聞かせていたというエピソードが残っています。この詩を味わうと、みすゞさんが浄瑠璃を懐かしく想い出している様子がとてもよく伝わってきます。
私たち一人ひとりの記憶の中には、こうした懐かしく思い出すものの中に、温かい気持ちになるものもあれば、どこか切なくなるものもありますが、この詩に溢れる切なさがまた、美しく描写されていて、切なさが美しく溶けていく様は、とても綺麗な世界に感じます。みすゞさんの心は、切なささえも美しい。でもそれが、この自然界の本当の姿かもしれませんね。