『月と泥棒』
真っ暗闇に忍び寄る、13人の泥棒。でも…お月さまがその町を光照らし、銀のベールで 包みます。町の中も、泥棒達も全部、銀色に染まったので、泥棒達は逃げる道も忘れ、自分たちが泥棒であることも忘れ、町の果てに行きつきます。 銀のベールから外れた時、ハッと我に返る泥棒達。その滑稽な結末に、さらに朝を知らせる鶏が、「コケッコのバカッコとなく」という表現。金子みすゞさんの詩の中でも、とても面白い、絵本にしたくなる詩の一つです。
悪い心も全て、お月さまの美しい光で忘れてしまうという世の中になったら、どんなに嬉しいでしょうか。ぜひ、皆さんの中の面白い泥棒達の姿を描きながら、この詩を味わっていただきたいです。
『柘榴の葉と蟻』
5月下旬頃から花を咲かせる 『柘榴(ざくろ)』。その花を目指す蟻(アリ)の奮闘のお話です。人間にとっての葉っぱと花の距離と、蟻にとっての葉っぱと花の距離は、とてつもなく違いがありますね。人間が、葉っぱから花に移ろうとしている蟻の姿を眺めていて、すぐ そこなのにグルグルしている様子の時、「そっちだよ、そっちだよ」と言いたくなりますが、人間も同じなのかもしれませんね。人間よりも大きな存在、例えば、スケールを大きくして 宇宙の眼差しがあるとしたら、人間が人生をいろいろと迷いながら生きている姿も、「あっちだよ、こっちだよ」と、見守られているのかもしれませんね。
この詩の結末…実は、とてもクールな終わり方です。クールな現実をみつめる視線もまた、金子みすゞさんの詩の面白さの一つです。
『お菓子』
兄弟がいる人は、子どもの頃、お菓子の取り合いで喧嘩をした人も多いことでしょう。この詩は、お菓子を巡る子ども心の切ない詩です。みすゞさんの詩に触れると、子どもの頃の忘れていた記憶が蘇ったり、重なったりします。大人になっても、そんな子ども心を思い出させてくれて、そして子どもに対して優しくなれるような、そんな詩がたくさんあります。ぜひ、親子で、家族で、いろんなみすゞさんの詩に触れていただきたいです。
『極楽寺』
金子みすゞの詩には、みすゞさんが故郷・仙崎の大好きな場所を詠った『仙崎八景』と題した8編があります。その中の1編が『極楽寺』です。
金子みすゞ記念館がある、みすゞ通り沿いにある極楽寺には、いま、その詩碑が建っています。ぜひ、行楽日和の季節にも、ゆっくり散策してほしいエリアです。みすゞさんの思い出がいっぱいです。
『仙人』
お花を食べた仙人が天へのぼっていくおとぎ話。それを思った子どもが、ひももの花を食べましたが苦い。そこでれんげの花も食べてゆく。こうして私もいつか仙人になれるだろうと思いつつ、夕暮れになってお家へ帰ったら、御飯の時間。やっぱり美味しい御飯です。
みすゞさんは、夢見る気持ちも尊重しながらも、現実世界の幸せ、あたりまえの幸せがあるんだよと、その現実をちゃんと見つめる視点を忘れません。私たちがしっかりと今を見つめる大切さ。子どもたちにもわかりやすい、大人がハッとする、そんな言葉でいつも伝えてくれています。
『金魚』
月と花と金魚をモチーフに、月はひかりを、花はにおいを、そして金魚はきれいな宝玉(たま)を吐きだすという、語りかけのように、その美しさを伝えてくる詩です。
この見つめている世界の細やかな部分を、とても繊細に見つめ、大切に、優しく包んでいる心の眼差し。優しさに包まれる詩です。
『四月』
新年度を迎える時期に毎年この詩を想います。いろんなことが新しくなる4月ですが、金子みすゞさんの端的な表現が、また見事にその喜びをストレートに伝えてくれる詩です。自分のいろんな思いを伝える時、実は言葉数が少ないほうが相手に伝わりやすいものです。いろんな説明や背景を付け加えるよりも、相手の解釈に委ねる心の余白があったほうが不思議と心を傾けてくれます。金子みすゞの詩もまた、必要最小限の言葉数だからこそ、読み手がぐっとその詩の世界に入り込みたくなる。新年度も、みすゞさんの眼差し、また新たに分かち合っていきましょう。
『金米糖の夢』
春の田舎のお菓子屋さんの素朴な風景の中で、硝子の瓶に入れられた金平糖が、その瓶から飛び出して、夜のお星さまになる夢を描いている詩です。実は、先日開催したデザートプレート付のコンサートのデザートメニューには、この詩にちなんで、料理長さんの粋な計らいで、硝子の器に金平糖をアレンジして添えてくださいました。私たちの周りのいろんなものにも、いろんな思いがある、そんな眼差しで日常を見つめると、毎日がより一層優しい世界に映る気がします。それが、金子みすゞの眼差しの世界ですね。
『草原の夜』
寝静まる真夜中、草原では月のひかりと、天使によって、草花が成長していく。その様子をなんとも神秘的に描いている素敵な世界。それも、人間や生き物たちが草花によって喜ぶ姿を自然界が知っていて、また明日も喜ばせようとしている思いが映し出されています。私たちには自然界の思いは見えてはこない、でも、慮ることは出来ます。それは人間と自然、人間と生き物、人間と人間、全ての間で大切なこと。私たちは、人間として大切な眼差しを、自然界からも受け取っています。
『魚売りの小母さんに』
山ざくらが出てくる春の詩です。子どもは大人がオシャレにしていることが好きなのでしょうか。子どもが、魚売りの小母さんの髪に、山ざくらを挿す、その時の心模様が描かれている詩です。美意識、元々子どもはとても高いのかもしれませんね。仕事柄、オシャレをしていない小母さんにも、綺麗な井出達でいてほしい、純粋な子どもの綺麗な心が映し出されています。私たち大人は、自分の都合でいろんなことを決めていますが、子どもにはその一つひとつがとても大きく影響していたりすることを、この詩からも少し感じる気がします。
『星とたんぽぽ』
金子みすゞの詩の代表作のひとつ、と言えるでしょう。見えない中にこそ大切な姿がある。情報や物の溢れる現代に投げかけるメッセージが伝わってくる詩です。星の輝きは、時々亡くなった命の輝きに例えられ、たんぽぽなどの植物たちの根っこは、英語で「ルーツ」です。ルーツは、私たちの先祖のことも指す英語。私は、みすゞさんが星とたんぽぽの根っこで伝えてくる、この詩の心に、亡くなった命と繋がる命、命の輝きをこの詩に感じてなりません。受け継がれる命こそ、私たちにとって大切な輝きですね。